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2014年9月1日
がん化学療法時の副作用軽減効果を確認
アミノ酸シスチンとテアニン、がん支持療法に有用
2014年8月30日(土)第52回日本癌治療学会で優秀演題として発表
がんに伴う症状や、がん治療による副作用を予防、軽減させるための治療。

 味の素株式会社(社長:伊藤雅俊 本社:東京都中央区)は、アミノ酸の一種であるシスチンとテアニン(以下、アミノ酸シスチンとテアニン※1)を医療現場で活用すべく、基礎から臨床まで研究を行っています。このたび、当社が研究支援を続けてきた仙台オープン病院 副院長 土屋 誉 医学博士のグループは、アミノ酸シスチンとテアニンの摂取により、がん化学療法時の副作用を軽減する効果があり、抗がん剤(がんの化学療法剤)治療の完遂率※2を有意に改善することを確認しました。この研究成果は、2014年8月28日(木)〜30日(土)、横浜で開催された第52回日本癌治療学会で優秀演題として発表※3されました。

 がんの治療において外科手術とともに抗がん剤は重要な位置を占めます。しかし、抗がん剤により粘膜上皮が障害を受けて、口内炎、下痢、消化管障害などの副作用が発生すると、抗がん剤の投与量を減らしたり、投与を中止したりしなければならず、期待する効果が得られにくくなります。
 土屋 誉 医学博士らのグループは、胃がん、大腸がんの根治手術※4を受けた後の化学療法(補助化学療法※5)として、抗がん剤TS−1※6を服用する症例を対象とした臨床試験を実施し、化学療法開始1週間前から化学療法終了までの5週間に渡りアミノ酸シスチン700mgとテアニン280mgを1日1回摂取することにより、食欲不振、下痢を有意に抑制し、規定用量の完遂率を有意に上昇させることを明らかにしました。
 がん治療による副作用に対しては、支持療法の確立が求められていますが、今回の成果によりアミノ酸シスチンとテアニンの摂取はその有望な候補と考えられます。


 アミノ酸シスチンとテアニンの摂取は、生体内で抗酸化作用※7や免疫※8調節作用を持つグルタチオン※9を増加させることが明らかになっています。これまでの研究で、アミノ酸シスチンとテアニンの摂取は強い運動負荷時の免疫抑制の改善、風邪症状の抑制、周術期(手術前後のすべての時期)の過剰な炎症を抑制することが示されています。

 当社は、今回の成果を踏まえて、今後もアミノ酸シスチンとテアニンの基礎から臨床まで研究を継続するとともに、積極的な研究支援を行い、がん治療分野での課題解決に大きく貢献していきたいと考えています。


参考資料

※1:アミノ酸シスチンとテアニンとは
1)シスチンとは
肉類に比較的多く含まれているアミノ酸で、非必須アミノ酸であるシステインがSH基で2個結合(S−S結合)したもの。
2)テアニンとは
お茶の葉に含まれているうま味アミノ酸で、非必須アミノ酸であるグルタミン酸の誘導体。摂取すると体内でグルタミン酸とエチルアミンに分解される。
3)アミノ酸シスチンとテアニンの配合物を使用する理由
免疫機能の調整で重要な働きをするグルタチオンの合成を上昇させることを目的に配合。
・ グルタチオン産生能力の向上効果について
当社および大阪府立公衆衛生研究所との共同研究により、シスチンとテアニンの経口投与によりグルタチオン合成の上昇が観察され、さらに免疫機能も増強することを明らかにしている(KuriharaJ Vet Med Sci. 2007 69(12):1263-70. TakagiJ Vet Med Sci. 2010 72(2):157-65.)。

※2:完遂率
計画した治療を実際に行うことができた患者の割合。

※3:第52回日本癌治療学会での主な発表演題
・O90−2 アミノ酸シスチン・テアニンの経口投与はTS−1の副作用軽減効果を有する
(公益財団法人仙台市医療センター・仙台オープン病院・消化器外科 土屋 誉)
・P81−2 化学療法中発生した口内炎に対するアミノ酸シスチン・テアニン経口投与の効果
(公益財団法人仙台市医療センター・仙台オープン病院・消化器外科 土屋 誉)
・P81−3 担癌モデルでのアミノ酸シスチン・テアニン経口投与がCDDP抗腫瘍効果に及ぼす影響
(味の素株式会社・イノベーション研究所 柴草 哲朗)

※4:根治手術とは
病気を完全に治すことを目的とした手術で、がんを取り除くとともにがんの転移、再発防止の視点からがんの周囲の組織を取り除く。

※5:補助化学療法
手術後にがんの再発を抑制するために制がん剤、抗がん剤を投与する治療法。

※6:TS−1
消化器がん(胃がん、結腸・直腸がん)頭頚部がん、非小細胞肺がん、手術不能または再発乳がん、膵がんに用いられる抗がん剤。副作用として MochizukiBr J Cancer (2012) 106(7) 1268-1273では口内炎、食欲不振、下痢、倦怠感等が示されている。

※7:抗酸化作用
生体の酸化ストレスを無毒化すること。
活性酸素が体内で大量に作られ、さまざまな細胞内器官に障害が起きる状態、あるいは生体内で活性酸素の 解毒が追い付かない状態をバランスよく正常化する働き。

※8:免疫
自身の正常な細胞である自己とそれ以外の自身の異常な細胞、がんやウイルス、細菌などの非自己を区別して、非自己を攻撃、殺傷、排除する機能。

※9:グルタチオン
3つのアミノ酸、グルタミン酸・システイン・グリシンがこの順に結合した物質。生体内で重要な抗酸化物質である。日本では医薬品として発売されている。




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