![]() 2013年12月4日
味の素株式会社(社長:伊藤雅俊 本社:東京都中央区)は、血液中のアミノ酸濃度のバランスに注目した「アミノインデックス® がんリスクスクリーニング(AICS)」事業を実施しており、奈良県立医科大学 (奈良県橿原市)の國安弘基 教授を中心としたグループと共同で、がん患者の血液中のアミノ酸濃度 バランスが変動するメカニズムの解明に関する研究を進めています。この度、がん細胞から分泌される HMGB1と呼ばれるたんぱく質の作用により、正常な細胞内のたんぱく質がアミノ酸に分解され、その一部が血液中に漏れ出ることで血液中のアミノ酸濃度バランスが変動することを世界で初めて明らかにしました。
がん患者は、健康な人と血液中のアミノ酸の濃度バランスが異なることが知られています。今回の論文では、多くのがん細胞が分泌するHMGB1というたんぱく質に注目し、血液中のアミノ酸の濃度バランスが変動 するメカニズムを世界で初めて解明しました。HMGB1は血流に乗って筋肉に到達し、筋肉を構成する 骨格筋細胞に働きかけ、糖の分解を阻害することでエネルギー不足の状態を引き起こします。エネルギー不足に陥った骨格筋細胞は自らのたんぱく質を分解してアミノ酸を作り出し、アミノ酸をエネルギー源として活用します。作り出されたアミノ酸の一部は血液中に漏れ出し、がん細胞に取り込まれてエネルギー源として利用されます。この一連の作用が、がん患者の血液中のアミノ酸濃度のバランスを変化させている原因のひとつであることが明らかとなりました。
この研究成果は、がん関連で権威のある学術誌の米国がん学会 学会誌「Cancer Research」のオンライン版(http://cancerres.aacrjournals.org/content/early/2013/11/06/0008-5472.CAN-13-1052.abstract)に2013年11月6日に掲載されました。その後、本誌にも掲載されます。
![]() がんに罹患すると血液中のアミノ酸濃度バランスが変動することは、これまで数多くの論文で報告されてきました。当社は、この現象に着目し、5ミリリットル程度の血液を採取してアミノ酸濃度を測定し、その バランスの変化から胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん・卵巣がんの6種類のがんのリスクを一度にスクリーニングできる「アミノインデックス® がんリスクスクリーニング(AICS)」を、株式会社エスアールエルと2011年4月より事業化しています。
当社は「アミノインデックス® がんリスクスクリーニング」の事業を通じて、今後も21世紀の人類の課題である、健康な生活の実現に向けて貢献していきます。
【論文概要】
今回の研究は、動物モデルを用いて「なぜがんになると血液中のアミノ酸濃度のバランスが変化するのか」を解明したものです。その原因の一つと考えられる、がん細胞が分泌するHMGB1というたんぱく質の役割について検討しました。
【参考資料】
論文の題名と著者
Cancer usurps skeletal muscle as an energy repository
Yi Luo1, Junya Yoneda2, Hitoshi Ohmori1, Takamitsu Sasaki3, Kazutaka Shimbo2, Sachise Eto2, Yumiko Kato2, Hiroshi Miyano2, Tsuyoshi Kobayashi2, Tomonori Sasahira1, Yoshitomo Chihara1, Hiroki Kuniyasu1
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