2010年1月28日
オランダのライフサイエンス企業DSM社と
開発途上国における栄養改善を目的としたソーシャルビジネス開発で協力
※開発途上国の栄養不足などの社会問題を解決する持続可能なビジネス(当社定義)。
 味の素株式会社(社長:伊藤雅俊 本社:東京都中央区)は、オランダのライフサイエンス企業・DSM社(Royal DSM N. V.)と共同で、西アフリカ・ガーナをはじめとする開発途上国において、栄養改善を目的とした
ソーシャルビジネス開発に取り組みます。このように、当社では新事業・新製品開発を加速するために、国内外の社外資源を活用するオープンイノベーションを積極的に推進していきます。

 オランダ・ライフサイエンスの大手企業・DSM社は、開発途上国における栄養改善プログラムで多くの成功事例を有しています。今回の協力により、同社が保有する、ビタミンなどの微量栄養素による食品の栄養強化に関する科学技術的ノウハウと、当社の、食品の「おいしさ」追求に関する技術ならびにアミノ酸栄養に関する知見を共有化します。
 ガーナでの取り組みは、コーン等をベースとした現地の伝統的食品(Koko[ココ])に添加する
<栄養強化食品>を開発し普及させようというものです。今後約2年で、製品開発、市場調査、栄養改善効果確認試験などを実施し、3年後に本格的な事業化を目指す予定です。
 この度のガーナでの栄養改善領域におけるソーシャルビジネスの早期事業化により確立されたビジネスモデルを、今後、世界各国に展開していきます。

 当社は、開発途上国での栄養改善の実現を重要な使命の1つと考えており、これまでに、
「AIN(味の素「食と健康」国際協力ネットワーク)プログラム」や「リジン強化試験」といった取り組みを行っています(詳細別紙)。これらの実績、経験をもとに、2009年には新たに、ガーナにおいて、離乳期間の子供の栄養改善を実現するための食品の開発、普及を目指し、ガーナ大学、INF(International Nutrition Foundation)との共同プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、ガーナ政府、日本政府、JICA、国連機関(UNICEF、
WFPなど)、国際NGO、関連する企業等、多くのステークホルダーとの連携のもとに、開発途上国での栄養不足の課題を解決する持続可能なビジネスを構築しようという試みです。

 

【参考資料】

1.味の素社の栄養改善の取り組み
(1) AIN(味の素「食と健康」国際協力ネットワーク[AIN代表:足立己幸・女子栄養大学名誉教授])プログラム:
当社は、社会貢献活動の一環として、創業90周年にあたる1999年より、途上国での栄養改善活動
「AIN(味の素「食と健康」国際協力ネットワーク)プログラム」を行っています。本プログラムは途上国の抱える食・栄養・保健分野の課題を改善し、生活の質を向上させることを目的とした活動です。一般公募によるNGOのプロジェクトを、大学・国際機関の外部有識者が審査し、現地コミュニティーなどとの連携のもと、公平・透明性の高い支援を行っています。これまでに、アジア・南米を中心とする12ヶ国において、38のプロジェクトを支援し、約5万人に貢献してきました。
 
(2) リジン強化試験:
小麦粉等に必須アミノ酸の一つであるリジンを強化することによる、たんぱく質不足の解消及び、健康状態の改善を科学的に立証するため、INF(International Nutrition Foundation)のDr. Scrimshawらと共同で、1995年からパキスタンをはじめとして、世界5ヶ国で試験を実施し、その結果を学会等で発表してきました。


2.DSM社について
(1) 会社概要
社   名 Royal DSM N.V.
代 表 者 会長 Feike Sijbesma
所 在 地 (本社)オランダ・ヘーレン市
設   立 1902年
従業員数 23,591名(内、7,452名がオランダ)
売 上 高 2008年 9,297百万ユーロ(純利益 577百万ユーロ)
特   徴 「ライフサイエンス」と「マテリアルサイエンス」が成長の基盤。
ライフサイエンス分野では栄養(ビタミン類が中心)及び医薬中間体が主な事業。
 
(2) DSM社の栄養改善への取り組み
DSM社は世界の飢餓と栄養不足の問題解決に取り組んできており、そのために世界最大の食糧援助機関である国連世界食糧計画 (WFP)をはじめとした、種々の関係機関との連携を進めてきました。
また、DSM社はWFPの食糧援助の質を高めるため、微量栄養素の強化における、科学技術的専門知識、高品質栄養製品の提供及び経済的支援を行ってきました。

(DSM社の栄養改善プログラム)
 DSM社の栄養改善プログラムは、「隠された飢餓」として知られる微量栄養素の不足を取り除くことにより、人々に健康と繁栄をもたらすことを目的としています。このプログラムは家族の健康に焦点を当てており、特に、妊娠時から子供が2歳になるまでの期間が栄養不足の影響が最も深刻な時期であることから、子供を持つ母親と2歳以下の子供の健康に焦点をあてて活動しています。
 適切な栄養を与えることが、病気感染を防ぎ、エネルギーの利用を効率的にし、適正な成長を実現することになります。子供は初期の段階で適切な栄養を与えられないと、生涯、精神的、肉体的成長の可能性を奪われることになってしまいます。栄養不足を解決するためのプログラムは良く計画され、注意深くモニターされる必要があり、かつ、食事に不足している全ての必須微量栄養素を与えるようにしなければなりません。良い計画と適切に管理された食品の栄養強化は、栄養不足を持続可能な形で解決する最も経済的な方法の一つです。DSM社は、世界各国で、食品の栄養強化を効果的に進めるための専門知識、経験及びリソースを保有しています。同社は、ビタミン及び他の栄養素を総合的に提供できる唯一の企業であり、社内のR&D機能を活用して、各地の状況にあった最適な栄養ブレンド製品を作り、栄養教育や規制面での政府との連携を総合的に進めています。
 
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