味の素株式会社(社長:山口範雄 本社:東京都中央区)は、電子材料である層間絶縁用フィルム(ABF:
Ajinomoto Build-Up Film)の原料ワニスの生産能力を拡大します。現在、当社子会社の味の素ファインテクノ
株式会社(AFT)は、川崎工場にて設備の増設を行っています。また、群馬県中部の昭和関屋工業団地(群馬県
利根郡昭和村)に、第2工場の建設を計画しており、2006年4月より着工予定です。これにより生産能力は
2010年までに現行の約3倍となります。なお、設備投資額は総額で約85億円を予定しています。
ABFは主としてコンピュータ用半導体基板の層間絶縁材料として使われています。CPU(中央演算処理
装置)向けが中心で、この分野での当社シェアは約80%と推定しています。また画像データを制御する
グラフィックチップ(GPU)や、チップセットへの採用も急速に拡大しています。加えて、ゲーム機への採用も
始まるなど、更なる需要拡大も見込まれます。現在の対象製品は全世界で年間約5億個と推定されていますが、
2010年には3倍の年間約15億個まで伸びる可能性があるといわれています。当社の電子材料事業全体の
売上げは2004年度で約100億円ですが、需要の拡大をうけ、2005年度は20%程度の伸びを見込んで
おり、また、2010年度までには現在の2倍以上の売上げを目指します。
<当社の電子材料事業の成り立ち>
当社の電子材料事業は、アミノ酸の一種のグルタミン酸ナトリウム(MSG)の利用研究から、1960年代に
エポキシ樹脂の硬化剤を開発したことから始まりました。以降、エポキシ樹脂関連の技術開発を進め、アミノ酸系
硬化剤やそれを配合した接着剤を事業化しました。この技術を応用できる新分野の探索を進めていましたが、
1990年代初めからプリント配線基板の絶縁材料に注目し、特に成長が見込める用途としてCPUを中心とした
コンピュータ用半導体基板の絶縁材料に特化して開発を進めてまいりました。長年蓄積してきた樹脂配合技術に
より高機能絶縁材料を開発するとともに、従来、困難といわれていた液状樹脂のフィルム化に1998年、世界で
初めて成功し、以来、ABFは機能性及び生産効率の高さから、コンピュータ用半導体への採用を相次いで獲得
してきました。
事業運営は子会社の味の素ファインテクノ(株)が主体となっており、工業化検討、生産、販売を行っています。
新製品及び新技術開発は味の素(株)アミノサイエンス研究所が担当しています。
【参考資料】ABFについて
・製品:絶縁材料を2枚の保護シートではさんだフィルム。基板作成は、回路の書き込み(銅をめっき)と絶縁
材料付加を繰り返します。これをビルドアップ(Build-up)工法といいます。
・製造:原料樹脂や溶剤、粉体などを混合してまずワニスと呼ばれる液状混合物を製造、それを薄く延ばすと
ともに溶剤を除去しフィルム化します。ワニスの製造はAFT社内で行っていますが、フィルム化には
特殊な技術や設備が必要なため、外部の専門メーカーに委託しています。
・用途:半導体を乗せる基板には複雑な配線を組み込むために何層にもわたって回路(銅)が書き込まれて
います。
その層間に電流が流れないようにするための絶縁材料として使われます。
・当社の技術的優位性:
・半導体の処理速度を上げるためにはできるだけ細かい回路を書き込む(集積度を上げる)必要が
ありますが、そのために回路の線幅をできるだけ細くすることが必要です。ABFは絶縁性が高く、
幅をより狭くすることができます。
・熱による体積変化が小さいため温度変化に強い。
・従来は液状であったものをフィルム化できたため、基板の両側を一度に加工できる、溶剤を使用せずに
加工ができる、など作業性を大幅に改善できます。またフィルム化することにより 平滑性が増し、
より微細な配線が可能となりました。
【味の素ファインテクノ(株)の概要】 |
社 名 |
: |
味の素ファインテクノ株式会社 |
本社所在地 |
: |
神奈川県川崎市 |
設 立 |
: |
1942年9月 |
社 長 |
: |
高橋 敏男 |
事業内容 |
: |
電子材料の製造・販売 |
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機能化学品の製造・販売 |
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活性炭の製造・販売 |
資 本 金 |
: |
315百万円 |
従 業 員 |
: |
約190名 |
売 上 高 |
: |
16,357百万円(2005年3月期) |
当期純利益 |
: |
2,637百万円(2005年3月期) |
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