2004年3月23日


核酸系うま味調味料の新技術開発
〜微生物から新しいリン酸化酵素を発見〜

 
 味の素株式会社(社長:江頭邦雄 本社:東京都中央区)は、核酸系うま味調味料の製法検討において、位置特異的なリン酸化反応を行う微生物をはじめて見出し、この微生物から生産に適する新しい酵素を得ました。

 核酸系うま味調味料の原料であるイノシン酸およびグアニル酸は、主にタピオカデンプンを原料として発酵法により生産されます。しかし、これらを最終生産物として発酵生産するのは難しいため、イノシンやグアノシンを発酵生産し、これをリン酸化する方法が一般的に用いられています。当社は1960年代から、コストメリットが高い酵素法によるリン酸化法を検討してきましたが、この度新しい技術視点から、ピロリン酸をリン酸供与体とする新規な酵素的リン酸化法にトライし、その開発に成功しました。
 イノシン酸やグアニル酸は、5’位をリン酸化した5'-イノシン酸、5'-グアニル酸でないとうま味がありません。当社ではまずスクリーニングを行い、イノシンの5'位のみを特異的にリン酸化する酵素をもつ微生物をはじめて見出しました。しかしながら、本酵素はリン酸化活性だけでなく、生成した5'-イノシン酸を加水分解する活性も持っており、実用に適さない性質であることが解りました。そこで、進化工学的手法による本酵素の改良を行い、5'-イノシン酸を高い収率、蓄積で得られる実用に適した性質の酵素を得ることができました。この酵素は、グアニル酸のリン酸化にも適用可能で、5'-グアニル酸も高収率・蓄積で得られることを確認しています。
 本内容については、農芸化学会のシンポジウム(SY-4 3月31日(水)10:00 広島大学)でも発表されます。

 鰹節のうま味成分であるイノシン酸や干ししいたけのうま味成分であるグアニル酸は、うま味調味料として利用されています。これらのうま味調味料は核酸と呼ばれ、グルタミン酸ナトリウムとあわせると飛躍的に強いうま味を呈する相乗効果があることが知られています。世界中でスープ、ブイヨン、風味調味料などの加工食品や外食産業で幅広く利用されており、核酸系うま味調味料市場は約13,000トン(当社シェア
約40%)、年に7%ほどのペースで伸張しています。
 当社は、うま味調味料ビジネスのグローバル展開において、グローバル生産体制、地域密着型サービス体制、コスト競争力を強化し、世界的需要増に対応していくなどStrong No.1企業に向けた取り組みをさらに進めていきます。