2003年12月15日

分岐鎖アミノ酸による糖代謝改善効果
〜分岐鎖アミノ酸製剤「リーバクト顆粒」のもつ新しい薬理作用の解明〜

 味の素株式会社(社長:江頭邦雄 本社:東京都央区)は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)が筋肉に作用して血糖値を改善する作用を持つことを明らかにしました。

 当社では、肝硬変動物においてBCAAが肝臓でのアルブミン合成を促進するシグナル伝達を活性化することを2002年に明らかにしました(図1)。それに引き続く、今回の血糖値の改善作用(図2)はBCAAの新しい薬理作用として世界に先駆けた独創的な発見です。これらの発見は、BCAA製剤「リーバクト顆粒」(*)の作用メカニズムを解明する過程で見出されました。
*非代償性肝硬変における低アルブミン血症の改善という効能・効果で1996年に承認を受けた医療用医薬品

 肝硬変患者では、肝機能が低下しているため血液中のアルブミンが低下する(低アルブミン血症)のと同時に、その多くに糖尿病に類似した血糖値の異常に代表される糖代謝異常が見られます。最近では、こうした糖代謝異常が肝不全病態の悪化や肝癌の発生・進展に至る独立したリスク因子として、生命予後に悪い影響を与えると考えられています。そこで、当社は実験的に作成された肝硬変動物を用いた基礎研究を実施し、BCAAがインスリンの分泌を介することなく、筋肉への直接的な働きにより、特徴的な細胞内シグナル伝達を介して糖代謝を改善し、血糖値を改善することを明らかにしました。この結果を特許出願し、英文雑誌1)や学会2)にて発表いたしました。
 当社は、「リーバクト顆粒」が生命予後につながる重篤な合併症の発現を抑制することを確認しており、これにはアルブミンの改善に加え、BCAAの糖代謝に対する作用が寄与している可能性があると考え、さらに研究を続けています。

 このように、従来、栄養素のひとつと考えられていたアミノ酸は、生体内のシグナル伝達に作用するといった明確な薬理作用を持つことが明らかになってきています。当社は、こうしたアミノ酸の新しい薬理作用に着目し、医薬カンパニーの基盤戦略である「アミノ酸創薬」(アミノ酸の生理機能解明の中から医薬品を創出する)のキーワードのもと、患者さんにとって、安全で有効性の高い、価値のある新薬の開発を目指しています。

1)
BBRC, 299: 693 (2002), BBRC, 303: 59 (2003)
2)
第39回日本肝臓学会総会(2003)、第7回日本肝臓学会大会(2003)、第76回日本生化学会大会(2003)、第11回欧州消化器病週間(2003)




以 上