高温適応型アミノ酸生産菌のゲノム解析
−耐熱性の菌株はどのように進化してきたのか− 味の素株式会社(社長:江頭邦雄 本社:東京都中央区)では、ミレニアムプロジェクト微生物ゲノム解析の一環として行われたコリネ菌エフィシエンス株(Corynebacterium efficiens :C. efficiens)ゲノム解析プロジェクトに1999年−2002年の期間参画し、独立行政法人製品評価技術基盤機構、国立遺伝学研究所、大阪大学、東京薬科大学とともに共同研究を行いました。その結果の一部について2003年度の日本農芸化学会大会にて発表を行います。
C. efficiensは1987年に当社の研究者によってC. thermoaminogenesとして発見されました。既知のグルタミン酸生産菌であるC. glutamicumに最も近い種の一つであるとともに、これに比較して生育至適温度が高い(高温適応型である)ことが知られています。本共同研究では、40℃以上の高温でグルタミン酸が生産できるというこの菌の特徴に注目し、その耐熱性機構の解明、遺伝子の系統解析を目的として比較ゲノム解析を行いました。 発酵法によるアミノ酸の生産では、培養中に発酵熱が発生するため、一般的に発酵槽には冷却設備が整えられています。通常、C. glutamicumによるアミノ酸の発酵至適温度は30℃程度で、その温度を超えると冷却が必要となります。しかし、C. efficiensのような高温域での培養が可能な生産菌を利用することができれば、冷却の必要が無くなる、あるいは冷却設備能力を小さくすることができます。また、冷却に使うフロンなどの冷媒も削減できますので、コストの削減とともに環境への配慮も可能となります。このため、C. efficiensは次世代のアミノ酸生産菌株の親株として有望視されています。 当社では、今回の研究結果を今後のアミノ酸生産そしてゲノム研究への応用に役立てていくことを考えています。
以 上
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