活動レポート

企業で取り組む社会活動の記録

DXソリューションが実現した工場のリモート設備管理サービス〜クラウド上に再現された「3D工場」とは

味の素グループと「工場の設備管理」「工場を3D化するDXソリューション」………
味の素グループ=食品メーカーというイメージをお持ちの方には、なかなか結びつかないキーワードかもしれません。しかし、味の素グループが取り扱う商品は、ほとんどが「工場」で作られていますよね。

食品工場の建設や改修を担う味の素エンジニアリング㈱では、工場における人財不足、ノウハウの伝承の難しさ、故障やメンテナンスに対する労力の増加……などの課題を解決すべく、またDX(デジタルトランスフォーメーション)への挑戦として、サブスクリプション型の新しいビジネスモデルとなるサービスを開発。
工場に足を運ばなくてもPCの画面内で機械の設置やラインの改修を検討できる、次世代型のサービスを完成させたのです。

工場の現場でも進むDXへの取り組み

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をご存知でしょうか。
あらゆる業界の企業経営において注目されているDXとは、デジタル技術とデータを活用して新しいビジネスや仕事のやり方を追求しよう、という考え方のことです。

現在、多くの工場はロボットやコンピュータを駆使したハイテクプラントに変貌し、工場の日常業務でスタッフが直接機械を操作したり、その場で監視したりするようなことは大幅に減りました。
それでも、工場を安全かつスムーズに稼働させるためには、熟練したエンジニアによる細やかなメンテナンスが必要です。とくに厳しい衛生基準が求められる食品製造プラントではなおさらです。

そのうえ、複雑な管理システムに現場が対応できずこれ以上のデジタル化による効率性の向上が進まないといった工場特有の課題も浮き彫りになってきました。

そこで、味の素グループもさまざまなかたちでDXへの取り組みを進めています。
2020年4月、味の素エンジニアリング㈱がリリースした「PLANTAXIS®」(プランタクシス)は、工場を丸ごとスキャンしてデータ化、クラウド上に再現する「3D工場」サービスです。

工場をまるごと3Dデータ化する「PLANTAXIS®」

3Dデジタル工場管理サービス「PLANTAXIS®」は、まず、工場敷地内の建築物から工場内のタンクやコンプレッサーなどの機械設備まで、すべてをレーザースキャンして、無数の「点」のデータとして取り込みます。
取り込んだデータをパソコンに読み込ませると、3Dで表現された、実物そのままの工場が、画面上に出現します。
そして、パソコンやタブレット上で、その工場のどこに何があり、どんな配管になっているのかを確認することができ、機械類にカーソルを合わせると、名称や説明書、点検履歴などを見ることも可能になるのです。

さらに、測量や、機械類をドラッグしてその装置にまつわる基本情報や予備品情報、工事・点検の計画や結果を知ることもできるので、現地視察が不要になり、生産ラインのレイアウト変更や新しい機械の導入などを、正確な検証データに基づいて画面上でプランすることが可能になるのです。

PLANTAXIS® サービス概要

<導入>
1:工場のすべて(建物・レイアウト・設置された機械類)をレーザースキャン

2:クラウド上に3Dデータとして工場を再現
3:設備データを入力し3Dデータを紐付

<システム>
4:設置された機械の名称や説明書、工事履歴、点検履歴も3D画面から閲覧可能に

5:稼働データや工事・点検履歴をもとに補修時期やレイアウト変更を検討可能
6:改修や補修の計画に必要な現場調査(測量)も3Dデータで実施可能

<サービス>
7:工事等による変更箇所の定期的なスキャンによる3Dデータのアップデート

8:保全エンジニアによるデータ解析で進化し続ける設備管理へ

アジャイル開発のメリットと開発者の想い

「PLANTAXIS®」の開発を担当した、味の素エンジニアリング㈱の小林文宏常務と小林隆之氏にお話をうかがいました。

「2018年の秋に、工場を点のデータにすることをビジネスにできないかというアイディアが小林文宏常務から出たのが始まりです」(小林隆之氏)

小林隆之氏(エリア総括本部 川崎事業所 次世代技術部 デジタルビジネスグループ)

当初はeコマースに活用できないかという検討もありましたが、そこからエンジニアリングプラットフォーム、そして工場設備管理サービスへと、このアイディアを生かすための試行錯誤が続いたといいます。

「最初から、アジャイル型開発の手法を取りました」と小林氏。

アジャイル開発とは、短いサイクルで要件定義・設計・開発・テストを繰り返し、開発期間中に発生するさまざまな状況に対応しながら進めることです。

工場設備管理サービスにターゲットを定めてから、開発に要した期間はおよそ8か月。開発には味の素エンジニアリング㈱に加え、3D-CAD互換ソフト等を専門とする世界的企業の㈱エリジオンと共に、少数精鋭チームで開発を行っていきました。

「とにかく他社より早くリリースしたいという思いがありました。開発の早い段階で、外部のお客様からご興味を持っていただいたのも大きかった。実際に使うお客様から『こう活用したい』という要望をうかがって、それを反映しながら開発することができました。
機能の追加や修正、デザインの変更など、アジャイル開発のメリットが出ました」(小林隆之氏)

「社内外の方々から意見やアイディアをいただきながら、ビジネスモデルを固めていきました。まるでロールプレイングゲームのように、開発を進めていくごとに仲間が増えて、助けてもらったようなものです。開発を始めたときと、現在の「PLANTAXIS®」とでは、いい意味でかなり違うものになりました。
「PLANTAXIS®」はこれからもお客様にご利用いただくことを通してSaaS(Software as a Service)として進化し続けます。新しい機能の追加により、お客様への提供価値を最大化していきたいと思っています」(小林文宏常務)

工場での働き方を変えるビジネスモデルの誕生

驚くのは、二人とも「事業開発の経験もサービス開発の経験もないところからのスタートだった」ということです。

社内はもちろん、お客様など外部からもさまざまな意見や協力を得て生み出された「PLANTAXIS®」は、まさに味の素グループ従業員の共通の価値観「味の素グループWay※」でもある「開拓者精神」の発露であり、「新しい価値の創造」にかなうプロジェクトとなりました。

「これまで、味の素グループ以外の企業に向けた当社のビジネスは、「工場を建設し引き渡したらそれで終わり」という単発型のビジネスモデルが中心でしたが、「PLANTAXIS®」は違います。
お客様と長くお付き合いできる、サブスクリプション型の新しいビジネスモデルを打ち立てました。
新規事業開発としては今後のスケールアップが課題であり、まだ「ゼロから1」になった段階です。経営と担当者が密に連携し、さらに外部の力も借りることで新しいアイディアを素早くビジネスの形にすることができました。デジタルを活用し現状を変革するために、とにかく「やってみること」が大切だと思います」(小林文宏常務)

「PLANTAXIS®」は、工場での働き方を大きく変えるイノベーション。味の素エンジニアリング㈱の強みと他社の技術力を融合させた、新しいビジネスのかたちになりました。

ビジネスも働き方も大きく変わろうとしている現在、工場の現場でも、人財不足をはじめとしたさまざまな課題の解決は、より重要性を増しています。
そんな中で実現した「PLANTAXIS®」の開発は、事業活動を通じて新しい社会価値と経済価値を生み出していく味の素グループの「ASV(Ajinomoto Group Shared Value))を体現したひとつの形といえるでしょう。

※味の素グループWay:従業員一人ひとりが共有する価値観、仕事をする上での基本的な考え方、姿勢のこと
「新しい価値の創造」「開拓者精神」「社会への貢献」「人を大切にする」
※ASV:創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組み

※本記事は、2020年9月時点の内容に基づき、掲載されています。

デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

<参考:DX の定義>
DX に関しては多くの論文や報告書等でも解説されているが、中でも、IT 専門調査会社の IDC Japan 株式会社は、DX を次のように定義している。※1 企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内 部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラ ットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソ ーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデ ルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図る ことで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。(※1)Japan IT Market 2018 Top 10 Predictions: デジタルネイティブ企業への変革 - DX エコノミー においてイノベーションを飛躍的に拡大せよ, IDC Japan プレスリリース, 2017 年 12 月 14 日

<参考:SaaSの定義>
Software as a Service(=サービスとしてのソフトウエア)
システムの基盤機能、ネットワーク基盤機能、開発・実行基盤機能、ハード基盤機能とデータセンター(建物・通信ネットワーク機器含)の複合機能をネット経由で提供するサービス。

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