スポーツの舞台裏に迫る『挑戦のそばに』

日本で最初のプロアイスホッケーチーム、H.C.栃木日光アイスバックス。かつて所属選手として活躍し、引退後はスタッフとしてチームに貢献しているのが、清川和彦マネージャー。選手のスケジュール管理やクラブの方針に関わる調整を行い、より愛されるクラブにするため、日々奮闘されています。今回は、常に選手のことを考え、「選手が長く活躍できる環境を作ってあげたい」と語る清川マネージャーにお話を伺いました。

現役時代の経験を活かしたサポート

「氷上の格闘技」とも呼ばれ、スピード感あふれるパックのダイナミックな展開が魅力のアイスホッケー。日本で最初のプロクラブ、H.C.栃木日光アイスバックスは地元との密着を大切にして、ファンから愛されるチームです。清川和彦さんは、そこでマネージャーとしてクラブを支えています。
清川マネージャーは北海道出身。幼い頃からアイスホッケーに勤しみ、かつては日本製紙クレインズやH.C.栃木日光アイスバックスなど5つのチームに選手として所属しました。現役時代は「選手を家に集めて飲み会をしたり、ムードメーカーの立ち位置でした」と振り返ります。
15年の現役生活を終え、現在の仕事はクラブのマネージャー。主に選手のスケジュール調整、道具の管理など、クラブに関わる調整やスポンサーへの営業も担当しています。仕事内容が多岐に渡り忙しい中で、一番大切にしているのは「選手のストレスにならない環境を作ること」。会社と選手の間を繋ぐ架け橋として、配慮を行う上で、自身が選手だった経験を活かしています。
「現役時代に5つのチームを渡り歩いた結果、チームによって様々な色があることに気付きました。それぞれの良いところをアイスバックスにも取り入れていけたら、自分なりの貢献になるかなと思っています。その意味で、現役時代には周囲からのこまめな声掛けに救われていたのもあり、選手にはひたすら『頑張れ』と声をかけるようにしています」
自らも同じ立場を経験したことがあるからこそ、選手の気持ちも理解できる。元選手の清川マネージャーだからこそできるサポートを徹底しています。

「面白い」と思えるからこそ、尽力できる

昨年H.C.栃木日光アイスバックスは、全日本選手権で準優勝に輝きました。しかし、今シーズンは選手の入れ替わりもあり、「中々波に乗れない状態で、選手が頑張っているのに結果が出なくて大変」な状況。「チームとして若返りを図っているところで、経験値の高いベテランと若い選手がお互い切磋琢磨して戦っていきたいです」とチームの方向性を示します。
近年のアイスバックスのチーム作りにおいて、大きな影響をもたらしたのが、現ヘッドコーチ(HC)、アリペッカ・シッキネン氏の就任でした。清川マネージャーは、シッキネン監督の戦い方に「衝撃を受けた」と言います。北欧フィンランド出身であるシッキネン監督の戦術は、清川マネージャーがこれまで行ってきたアイスホッケーとは大きく異なっていたそうです。
「日本のホッケーは言うなれば、パックを相手のゾーンに投げ、相手が取ったらプレッシャーをかけて奪い、攻める北米スタイル。反対に、シッキネン監督の出身である北欧は自分たちでパックをキープするスタイルです。例えばサッカーで言うならば、個人技で局面を打開するブラジルと、ボールキープを重視するバルセロナのような感じですね。私がこれまでやってきたアイスホッケーとは根本から違っていて、そんな戦術もあるのかと驚きました」
その画期的な戦い方で、選手、監督、そしてマネージャーをはじめとするスタッフ全員が一丸となり、チーム改善やアイスホッケーのアピールに取り組んでいます。「アイスホッケーは、寒さも吹き飛ばすような熱いぶつかり合いが繰り広げられています。実際に裏方として選手を見ていても、ボロボロになりながら戦っている。怪我と隣り合わせの真剣勝負が面白い。例えばラグビーを面白いと思った方には、絶対に面白いと思ってもらえる自信があるので、一度見ていただきたいです」。
アイスホッケーを“絶対に面白い”と言い切る清川マネージャー。その競技に対する強い思いは、献身的なサポートの原動力になっていました。