スポーツの舞台裏に迫る『挑戦のそばに』

2012年ロンドンでメダル目前まで迫るベスト4へ進出、全国的に知られる存在となったMF東慶悟選手。複数クラブによる争奪戦の末、FC東京へ加入したのが2013年。的確なスルーパス、得点に直結するスペースへのランニングなど、鋭いゴール嗅覚を感じさせるプレーでチームの主軸を担ってきました。在籍6年目を迎える今季は、主将を務めることになった東選手。彼にとっての挑戦とは何か、それを支える存在とは?

新たなチャレンジの中で感じる自分の変化

「最後に優勝したとき、“慶悟はいいキャプテンだったな”と言われる存在になりたい。逆に言えば、“慶悟がキャプテンだったから優勝できた”と言われるような選手になっていきたいです」
今シーズンのJ1リーグ、2月の開幕から5月末の初黒星まで、無敗を貫いたFC東京。その躍進は、新キャプテンに就任したMF東慶悟選手の活躍抜きに語れません。今年はエースナンバー10を継承。卓越したパスセンス、そして何より、パスを出した後も手を抜かずスペースへ走る質の良い動きが、チーム全体にリズムを生み出しています。しかし、開幕前は不安も感じていました。
「不安は…ありましたね。実際に今も不安ですし、キャプテンに選ばれた上に10番をつけることになった2つの責任は、重く感じています。自分にとっては、それが今年の挑戦。FC東京としても勝負の年、チャレンジする一年だと思うので、いい刺激になっています」。
この新しいチャレンジに際して、自分の中でも心がけていることがあるそうです。「チームメイトへの声がけはかなり気にしています。一人ひとりアプローチが違うので、そこが一番難しいですね。今これを言ってチームのプラスになるのかとか、言わない方が良いケースもある。選手に対してもチーム全体にも響き方が違うので、難しさを常に実感しながら、日々過ごしています」。
立ち位置が変わって、「日頃気づかないことに気づいたり、日頃やらないことをやったりすることも多くなった。そういう意味では自分も変わったと思います」と語る東選手。完璧ではなかったとしても変化を前向きに受け止めるその姿勢が、今の結果につながっています。

余裕のなさが消えたとき、一回り成長できるであろう自分への期待感

今シーズン好調の要因を、東選手は「色々な要素が積み重なって、今の順位がある」と評価します。「監督が2年目でやりたいサッカーをやれるようになったし、自分たちの目標がはっきりして、チームのまとまりが出てきました」。戦う集団としての進化は、やはり大きく影響したことのひとつです。
「シーズン前半は、久保建英選手の存在が大きかったと思います。昨年は、半年チームにいて試合になかなか絡めなかったですが、今年は昨年なかったピースとしてチームの攻撃を引っ張ってくれました。その分、僕の役割も少し変わったし、髙萩洋次郎選手も含めて、中盤はすごく良いバランスでやれていると思います」。
実際に東選手の言葉通り、チームは中盤だけではなく守備から前線までバランスが良くなりました。縦に展開の早いサッカーも、見る側からすれば魅力のひとつ。選手の個性も際立ち、見ていてより楽しいチームへと成長しています。その環境において東選手も、さらなる自分の可能性を感じていました。
「役割が少し増えた分、自分のプレーに100%集中するより、チームのことや周りのことも考えなければいけないと思うようになりました。その意味では、まだまだ余裕が無い状態でもあります。そこを越えて、自然にプレーできる様になった時に、もっと自分も良いプレーができるのではないかなと感じています」。
と未来への希望を語ります。でも、「まだまだもがいている状況ですけどね(笑)」と、一筋縄ではいかない葛藤も垣間見えました。