発表内容は以下の通りです。
▼発表演題
「植物ステロールエステル含有マヨネーズが境界域および軽度高脂血症者の血中コレステロールに及ぼす影響」
▼発表者:味の素(株)食品研究所(現加工食品開発・工業化センター) 石崎太一ら
【研究の背景】
近年、日本人の食生活は昔ながらの低カロリー、低脂肪から、欧米型の高カロリー、高脂肪に変わってきました。また、交通網の発達などによる運動不足が懸念されています。このような環境の急激な変化により、高脂血症者(高コレステロール血症・高中性脂肪血症など)などの生活習慣病者が増加し、生活の質(QOL)の低下や医療費の高騰などが社会的な問題となっています。
高脂血症(診断基準;総コレステロール220mg/dl以上など 日本動脈硬化学会動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版)の中でも高コレステロール血症は動脈硬化の最も重要な危険因子の1つであり、血中コレステロール値が高くなりすぎると虚血性疾患(心筋梗塞・狭心症)の発症のリスクが増加するといわれています。食生活の中でコレステロールを正常域に保つことが大切です。
●植物ステロールエステルとは・・・
植物ステロールエステルは植物ステロールに脂肪酸がエステル結合した構造をしています。穀類、野菜などの食品に含まれる微量成分で、特に菜種、大豆、ブロッコリー、ふすまなどに多く含まれています。
植物ステロールエステルは腸内でエステル結合が切れ、植物ステロールの遊離体となります。植物ステロールは図1に示しましたようにステロイド骨格を持ち、同様にステロイド骨格を持つコレステロールと非常に良く類似しています。
●植物ステロールの血中コレステロールを下げるメカニズム
コレステロールは胆汁酸ミセルを形成し、小腸から吸収されます。植物ステロールはコレステロールと構造が類似しているため、コレステロールのミセル化を競合的に阻害します。ミセル化されなかったコレステロールは体外に排泄され、体内へのコレステロールの吸収量は減少し、血中コレステロールは低下します(図2)。
【試験方法】
日本人の境界域および軽度の高コレステロール血症者92名を以下のように4群に分け、以下の試験マヨネーズ15gを毎日4週間摂取して頂きました。摂取開始時、摂取2週後、摂取4週後(摂取終了時)に血中総コレステロール、LDLコレステロールを測定しました。
| (1)マヨネーズL群(24名): |
植物ステロールエステル*440mg含有マヨネーズ15g/日 |
| (2)マヨネーズM群(24名): |
植物ステロールエステル870mg含有マヨネーズ15g/日 |
| (3)マヨネーズH群(21名): |
植物ステロールエステル1,290mg含有マヨネーズ15g/日 |
| (4)プラセボ群(23名): |
植物ステロールエステル非添加のマヨネーズ15g/日
* 植物ステロールの遊離体換算 |
【結果】
- 総コレステロール値の変動量(図3)
プラセボ群は、摂取2週後に低下した後、摂取4週後では摂取開始時と同程度まで上昇しました。一方で、植物ステロールエステル摂取群(マヨネーズL,M,H群)は、いずれも摂取2週後に摂取開始時と比べ大きく低下しました(統計的に有意)。さらに摂取4週後においても、摂取2週間後とほぼ同程度に推移しました(有意)。植物ステロールエステル摂取群とプラセボ群との有意差は認められないものの、その低下効果は植物ステロールエステルの含量に依存し、マヨネーズH群(植物ステロールエステル1,290mg/15g)が最も高い効果を示しました。
- LDLコレステロールの変動量(図4)
プラセボ群は、摂取2週後、4週後に摂取開始時と比べほとんど変動しませんでした。一方で、植物ステロールエステル摂取群(マヨネーズL,M,H群)は摂取開始時に比べ低下し、マヨネーズM群においては摂取4週後に、マヨネーズH群においては摂取2,4週後に有意に低下しました。さらに、摂取2週後においてマヨネーズH群が、摂取4週後においてマヨネーズM,H群が、プラセボ群と比べ有意に低値を示しました。LDLコレステロールにおいても総コレステロールと同様に、その低下効果は植物ステロールエステルの含量に依存し、マヨネーズH群が最も高い効果を示しました。
【考察】
本試験の結果、植物ステロールエステル含有マヨネーズの血中コレステロール低下効果は、マヨネーズ中の植物ステロールエステル含量に依存することが分かりました。総コレステロールの低下効果は、マヨネーズL群の摂取量である440mg/日において観察されました。一方で、LDLコレステロールの低下効果は、マヨネーズM群の摂取量である870mg/日において観察されました。したがって、明確な効果を発揮する植物ステロールエステルの一日あたりの有効量は約870mg程度であることが分かりました。欧米人を用いた試験結果において報告されている植物ステロールエステルの一日あたりの有効量は約800mgであり、日本人においても欧米人とほぼ同量の有効量であることが考えられました。