アミノ酸大百科

アミノ酸とサステナビリティアミノ酸とサステナビリティ

畜産物生産を支えるアミノ酸

アミノ酸で家畜の栄養改善と、環境問題解決への貢献

畜産物生産を支えるアミノ酸

家畜の飼育にも欠かせないアミノ酸

私たちのカラダを支える食、その中でも牛乳や肉といった畜産物はたんぱく質、ミネラルなどの重要な源です。動物の体は人間と同じように約20種類のアミノ酸で構成されており、そのうちの数種のアミノ酸は必要な量を体内で合成することができない「必須アミノ酸」です。家畜の健康、成長のためには、それぞれ必要な量のアミノ酸を飼料で与えることが大切です。

植物性飼料はアミノ酸バランスが悪い

家畜は、主に小麦やトウモロコシから作られた飼料で飼育されますが、それだけではリシン(リジン)やトレオニン(スレオニン)等の必須アミノ酸が不足しがち。飼料中のアミノ酸バランスが悪い場合、飼料に含まれるアミノ酸のうち最も少ないアミノ酸が必要量まで摂取できるだけの飼料が必要になりますが、そうすると過剰になるアミノ酸もでてきます。過剰なアミノ酸は家畜の体内で有効に活用されずに窒素化合物となり、糞尿中に大量に排泄されます。
穀物中の必須アミノ酸要求量に
対する充足率

グラフグラフ

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アミノ酸バランスの悪い飼料は環境負荷の原因

大量に窒素化合物を含んだ排泄物は、処理の過程で温室効果ガスであるN2O(一酸化二窒素)を発生します。こうして発生したN2Oの温室効果はCO2の約300倍とされ、地球温暖化に影響を与えます。また、アミノ酸バランスが悪い飼料は家畜の成長・健康のために多くの量が必要なので、畜産物の生産が増えていく場合には飼料用作物を育てる耕地も広げなければならず、森林破壊にもつながるのです。

N2O発生のメカニズム

足りないアミノ酸を補えば、排泄される窒素化合物は激減

ここでアミノ酸の出番です。不足するアミノ酸を補えば、飼料中のアミノ酸バランスが整い、過剰となるアミノ酸も減少、糞尿中に排泄される窒素化合物が約2~3割抑制されます。さらに、飼料中のたんぱく質が有効に利用されるため、家畜の成長に必要な飼料の量も減らすことができます。家畜の中でも反芻動物である牛は、通常第一胃でリシン(リジン)が分解されてしまい栄養として活用することが難しいのですが、牛が栄養として吸収できる小腸までリシン(リジン)を効率良く届ける技術も開発されました。
乳牛1頭当たりの糞尿中への窒素排出量

アミノ酸で持続可能な畜産を実現

このように、アミノ酸による家畜の栄養改善は、環境負荷の軽減、穀類の有効活用、畜産資源の増産にもつながります。未来に向けて、環境への負荷を抑えながら、畜産物の生産量を高めることはとても大切なこと。こうした技術はすでに世界各国に広く普及しており、アミノ酸は持続可能な畜産の切り札として大きく貢献しています。